武田・谷岡楓太(撮影・西尾典文)

広島の進学校に現れたドラフト候補 武田・谷岡楓太は「快速右腕」

 今年は佐々木朗希(大船渡)、奥川恭伸(星稜)、森下暢仁(明治大)の3人が目玉と言われているドラフト会議。しかしそれ以外にも将来が楽しみな候補は多く存在しているため、そんな選手たちについても主任研究員である西尾典文が見た試合のプレーぶりを交えながら紹介していきたいと。今回は広島の進学校に現れた“快速右腕”だ。

谷岡楓太(武田)

投手 176cm 80kg 右投右打

観戦日:7月17日(全国高校野球選手権広島大会 対神辺戦)

成績:1回 被安打0 0失点 3奪三振 2四死球

この日の最速:148キロ

確認できた変化球:スライダー

 谷岡の名前を聞いたのは昨年秋のこと。県大会でもベスト8まで勝ち上がり、140キロ台後半のストレートを投げると評判になっていた。広島在住の知人に聞いた話では、コントロールはかなり難があるが、馬力はあるとのこと。また、武田高校は県内でも有数の進学校で、平日の全体練習時間はわずか50分であるという。そして、谷岡は春を迎えて最速152キロまでスピードアップしたという話も流れてきた。そんな環境でここまでスピードがあるというだけで魅力である。夏の地方大会でも見たい選手のリストの上位に入れ、7月中旬に広島に向かった。

 武田高校が登場するのは午後からということで、午前中は広島商の試合を県営球場で観戦。甲子園でも活躍を見せた天井一輝(3年・中堅手)を3打席確認してから呉二河球場に向かった。谷岡の背番号は11。春は故障もあって県大会での登板もなかったことが影響しているのかと思ったら、後で聞いたところチームの方針で背番号1はエースではなく主将がつけているとのこと。しかし、谷岡は先発ではなくベンチスタートで、試合は武田がリードを広げる展開に。このままコールド勝ちかという最悪の状況も頭をよぎったが、9点リードの7回から谷岡はマウンドに上がった。

武田・谷岡楓太(撮影・西尾典文)

 フォームは良く言えばダイナミックだが、悪く言えばかなり無駄が多い印象。テイクバックで体を沈ませて右肩を下げるいわゆる“かつぐ”動きが大きく、上下動が多い。当然リリースは不安定になり、先頭打者から死球、暴投、死球でいきなりピンチを招いた。だが、これで開き直ったのか、その後はストレートで押しまくり三者三振。最速は148キロをマークした。わずか1回の登板だったが、良さも悪さも全て見せてくれたようなピッチングだった。ちなみに、その後のスポーツ紙の記事では「変化球はわずか1球」という見出しが出ていたが、それはピンチ後の話。少なくとも5球は変化球を投げており、127キロくらいのスライダーも素晴らしいキレがあった。

 課題は多いが、そのダイナミックなフォームとストレートの勢いは魅力に溢れている。谷岡を見て思い出したのが五十嵐亮太(ヤクルト)がデビューした頃のピッチングだ。当時の五十嵐はとにかくボールが抜けまくっていたが、スピードで圧倒するようなピッチングを見せていた。谷岡も五十嵐のように、良さを残しながら上手く脱力を覚えられればリリーフタイプとして大成することも十分に考えられるだろう。

(文・PABB主任研究員・西尾典文)

西尾典文 主任研究員

西尾典文
  • 1979年、愛知県生まれ。大学まで選手としてプレーした後、筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から技術解析などをテーマに野球専門誌に寄稿を開始。修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる

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